社会課題の複合的解決を示した31点が上位賞に選出
木を活かした建築やプロダクト、地域づくりや研究活動を顕彰する 「ウッドデザイン賞2025」 の上位賞が決定した。最優秀賞には、日本の木の文化と技術を象徴する「農林水産大臣賞」「経済産業大臣賞」「国土交通大臣賞」「環境大臣賞」の4作品が選ばれ、優秀賞、特別賞、奨励賞を合わせ計31点が受賞した。応募総数327点のうち206点が入賞し、最終審査では社会課題の複合的な解決につながる取り組みが重視された。
2015年に創設され、11回目を迎えた同賞は、木を通じて生まれる新しい価値を広く社会へ共有することを目的としている。審査委員長の赤池学氏は、建築分野における大規模木造の広がりや、造作家具を活かした多様な働き方の提案、川上から川下まで連携した新しいビジネスモデルなど、木材利用の裾野が明確に広がった一年だったと総評している。
最優秀賞には、万博会場の象徴となる「2025年日本国際博覧会 大屋根リング」、多様な働き方に寄り添う段床空間を備えた「ヤマト本社ビルA棟・B棟」、小国杉を使ったレシプロカル構造による無柱空間を生み出した「エバーフィールド木材加工場」、自然公園内でスポーツ振興と地域文化交流を促す「美郷町カヌー艇庫」の4件が選ばれた。いずれも木材の技術的可能性や、地域・環境との共生を強く意識した点が特徴である。
さらに今年からは、日本の木の文化や技術を海外へ発信する作品を対象とした「日本の技・文化特別賞」が新設された。昨年までの大阪・関西万博特別賞の流れを汲むもので、日本の木とデザインの価値を国際的に提示する役割を担う。
受賞作品は、12月10日(水)から12日(金)まで「エコプロ2025」内の特設ゾーンで展示され、初日には表彰式も開催される。さまざまな分野の木材利用の現在地を一望できる貴重な機会となりそうだ。
「2025年日本国際博覧会 大屋根リング」
内周直径約616m、円周約2kmにわたる圧倒的なスケールの世界最大の木造建築物として、ギネス記録に認定されるなど、万博来場者のみならず広く国内外日本の木の文化と技を発信することに成功している。日本の伝統的な貫接合を採用し、「つくりやすく・解体しやすく・リユースしやすい」架構形式とし、環境負荷を低減する循環型建築である。
ヤマト本社ビルA棟・B棟
想定するユーザーは多様な働き方を行うオフィスワーカーであり、床・天井のレベルが段階的に変化する木質の段床空間と、場所ごとに用途が変わる木質の造作家具を組み合わせることで、多様な働き方に応じた居場所を提供、働く場所に様々なバリエーションを作り出している。
エバーフィールド木材加工場
地域工務店の木材加工場として計画された。熊本県産の小国杉を使い材長5m以下の小中径製材が互いにもたれかかるように支え合う「木造レシプロカル構造」により、新しい木造無柱空間が実現した。木造建築産業のさらなる活性化のためや地域における大工の育成や技術力の向上を図るためのスペースとしても構想されている。
美郷町カヌー艇庫 カヌーパークみさと カヌーレIMAI
同施設は江川水系県立自然公園内に位置し、平時は地元中・高生のカヌー部の部室として使用されるほか、大学の合宿地として招致にも成功し、スポーツ振興が始まっている。美郷町ではバリフェスティバルという行事を行っており、地域経済の起爆剤として、国際文化交流の中心地としても機能しており、木造建築の認知を広めることに寄与しているほか、自然公園来訪にも貢献する施設となっている。
ウッドデザイン賞2025
主催:一般社団法人 日本ウッドデザイン協会
後援:農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
受賞作品展示:2025年12月10日(水)〜12日(金) 10:00〜17:00
会場:東京ビッグサイト 東6ホール 「エコプロ2025」内 「森と木で拓くSDGsゾーン」
表彰式:2025年12月10日(水) 午前、東京ビッグサイト特設ステージにて実施
ウッドデザイン賞公式サイト
https://www.wooddesign.jp/