2026年6月10日(水)から12日(金)まで、千葉・幕張メッセで開催された 「Interop Tokyo 2026」 が閉幕した。今年のテーマは「AIとインターネットの次章。〜Internet for AI, AI for Internet.〜」。展示会・基調講演の3日間の来場者数は、同時併催展イベントを含めて14万3,312人となり、2025年実績の13万6,875人を上回った。日別では6月10日(水)が4万4,478人、11日(木)が4万5,831人、12日(金)が5万3,003人である。
FINDERSにおいても、数回に渡り 「AI、宇宙、データセンターの現在地」 をテーマに Interop Tokyo 特集記事として、AI、宇宙、データセンター、放送・映像メディア、ShowNetなどの論点を取り上げてきた。本稿では3日間に渡る会場の様子を中心にレポート記事をお届けしていきたい。
AI NATIVE EXPOが示した 「本番で回るAI」 への移行
まず最初に取り上げたいのが、今回初めて同時開催となった 「AI NATIVE EXPO 2026」 だ。今年のInteropを読み解くうえで重要な意味があった同展は 「AI前提社会を支えるための開発・実装・運用・統制を探る専門展」 と位置づけられ、APPS JAPANのレガシーを継承しながら、生成AI/マルチモーダル基盤、AIエージェント、RAG/ナレッジ統合、AIネイティブ開発、Evals/可観測性、Runtime Guardrailsまでを一気通貫で扱う場として開催された。対象も開発者やデザイナーだけでなく、運用者、ガバナンス担当、事業責任者にまで広がっている。
ここで重要なのは、AIが 「試すもの」 から 「本番で回すもの」 へ移りつつあるという点だ。チャットボットや生成AIツールを導入するだけでは、企業や社会の仕組みは変わらない。AIエージェントを業務に組み込み、社内外のナレッジと接続し、品質を評価し、挙動を監視し、必要に応じて制御する。そのための設計・運用・統制が、AI活用の次の焦点になっている。
Interop Tokyo 2026がネットワーク、データセンター、セキュリティ、APN、クラウドネイティブといった 「AIを支える基盤」 を見せる場だったとすれば、AI NATIVE EXPOは、その基盤の上でAIをどう開発し、どう現場に組み込み、どう安全に運用するかを示す場だった。両者をあわせて見ることで、今年のInteropは 「AIの展示会」 ではなく、AI前提社会を実装するためのインフラと運用の全体像を提示する場だったと言えるのではないだろうか。
ShowNetが示した 「2年後、3年後のネットワーク」
そして今回もInteropを象徴する取り組みが、会場内に実際のネットワークを構築する 「ShowNet」 の存在だ。2026年のテーマは 「Engineering Everything Connected」。ShowNetは、出展社から提供される最新のネットワーク機器やサービスを相互接続し、最先端技術で構成される 「2年後、3年後のネットワークのひとつの姿」 を示すコンセプトネットワークと位置づけられているが、今年のShowNetで扱われた領域は広い。キャリアネットワーク、データセンター、モバイル、エンタープライズ、キャンパス、放送、セキュリティ、AIアプリケーションまでが対象となり、それぞれ異なる要件を持つネットワークをどう設計し、運用するかが問われた。
注目すべきは、ShowNetのキーワードがもはや 「高速化」 だけではないことだ。800G/1.6T時代の分散AIデータセンター、AI/ML時代を支える超広帯域・ロスレスなバックボーン、Wi-Fi 7、ネットワークスライシング、AIと観測データによる運用革新、水冷インフラなど、ネットワークは計算資源、冷却、運用、セキュリティと不可分になっている。
データセンター、宇宙、放送が同じ地平で語られた理由
今回のInteropでは、データセンター、宇宙、放送・映像メディアという一見異なる領域が、同じ文脈の中で扱われていた。
Data Center Summit では、生成AIの進化によってデータセンターが大きな転換点を迎えていることを背景に、電力、設備、ネットワーク、運用まで含めた次世代インフラの全体像が扱われた。 これは、AIを 「アプリ」 ではなく 「社会基盤」 として捉えるための視点である。
Internet x Space Summit では、「デジタルインフラストラクチャーが拓く月面社会」 を掲げ、インターネット業界と宇宙業界がデジタルインフラの重要性について共通認識を持つ場として企画された。地上のインターネットで培われた技術や設計思想を、月面や宇宙空間へどう拡張するのか。その問いは、FINDERSが事前に掲載した村井純氏インタビューの問題意識とも重なる。
Network x Media Summit では、IP・クラウド技術、さらに生成AIの登場によって、放送・映像メディアの環境が大きく変わりつつあることが示された。放送業界とインターネット業界の知見が交わることで、メディアの 「今」 と 「これから」 を共有する企画である。
さらに ShowNet Media over IP特別企画 では、全国13の放送局とShowNetが連携し、映像・音声などのリソースをIPネットワークで共有する実証実験 「ShowNet Media-X」 が行われた。異なるフォーマットやプロトコルをネットワークが融合し、全国規模のメディアネットワークを構成する試みである。
Best of Show Awardに表れた、AIインフラ時代の技術トレンド
さらに毎年注目を集める Best of Show Award においても、受賞製品から今年のInteropの技術トレンドが読み取れる。Best of Show Award は、出展企業がエントリーした新製品を、有力メディア各社や学術界の識者によって編成される審査委員会が審査し、「今年の一品」 を決定するアワードである。 つまり、会場で注目を集めた技術が選定される傾向がある。
今年の受賞傾向から見えるのは、AI時代のインフラに必要な技術領域の広がりである。シスコはネットワークインフラ、マネジメント&モニタリング、産業ネットワーク、Wi-Fi、セキュリティ、キャリア/ISP領域など計6部門7製品でグランプリを受賞した。特にDefenseClawは、エージェント型AIを統制するセキュリティ領域の製品として、AI活用の裏側にある新たなリスクへの対応を象徴している。
HPEも、Best of Show AwardとShowNetコントリビュータ部門でグランプリを受賞した。Juniper PTX10002-60MRルータ、Juniper MX301ユニバーサルルータ、Juniper QFX5250-64OE-Lスイッチなどが評価され、AI時代のネットワーク運用や高密度ネットワーキングへの対応が受賞理由として示されている。
NTTドコモビジネスは、APN(All Photonics Network)部門で 「過去最大距離のIOWN APNを利用したソリューションの動態展示」 によりグランプリを受賞した。IOWN APNとShowNetを接続し、日本全国の各拠点を結ぶ広域ネットワークを構築することで、合計約1万kmの実環境による動態実証デモを行った。
また、キオクシアはサーバー&ストレージ部門で、AI向け大容量245TBエンタープライズSSD 「KIOXIA LC9シリーズ」 が準グランプリ、AI・GPU主導のワークロードに最適化した 「KIOXIA GPシリーズ」 が審査員特別賞を受賞した。AI時代には、ネットワークだけでなく、ストレージの容量、速度、電力効率も重要な競争領域になっている。
ShowNetコントリビュータ部門では、日本ヒューレット・パッカードのPTX10002-60MRがグランプリ、ニフコの樹脂連結マニホールドが準グランプリ、ZUNDAのZUNDA CONNECT ROUTERが特別賞を受賞した。特にニフコの受賞は、水冷インフラの実装に必要なコンポーネントが評価された点で象徴的である。AI時代のインフラ競争は、ルータやスイッチだけでなく、冷却、配線、電力、運用部材にまで広がっている。
Interopは 「AIの展示会」 ではなく 「AI社会の設計図」
Interop Tokyo 2026を通じて見えてきたのは、AIという言葉の広がりである。AIは、チャットボットや生成ツールだけを意味するものではない。AIを動かすためには、データセンターが必要であり、電力が必要であり、冷却が必要であり、広域ネットワークが必要であり、セキュリティが必要であり、放送や宇宙といった産業領域にも接続されていく。
FINDERSが事前記事で取り上げてきた宇宙、放送、データセンターというテーマは、会場で一つの線につながった。AI前提社会において、インターネットは情報を運ぶだけの存在ではなく、社会の設計そのものに関わる基盤になっている。
Interop Tokyo 2026のセミナーアーカイブ配信は、2026年6月29日(月)10時から7月24日(金)17時まで予定されている。 会場で見えた技術の断片を、講演やセッションを通じて改めて確認することで、AI時代のインフラをめぐる議論はさらに深まっていくだろう。
Interop Tokyo 2026
会期:2026年6月10日(水)~12日(金)
会場:幕張メッセ (国際展示場 展示ホール3~8 / 国際会議場)
主催:Interop Tokyo 実行委員会
運営:(一財)インターネット協会 / (株)ナノオプト・メディア
参加費:無料(展示会・講演) WEBからの登録制・会期3日間有効
公式ホームページ
https://www.interop.jp/
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