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BUSINESS | 2026/03/24

香川大学KIDIが拓く産学共創
組織の垣根を越えた研究チームが生む
オープンイノベーション

連載:最先端研究×産学融合で日本を変える!「Jイノベ」の挑戦

香川大学イノベーションデザイン研究所(KIDI)

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経済産業省では、長期的・持続的な日本経済の発展のため、大学や高等専門学校等の機関を中心とした研究拠点の中から、企業ネットワークのハブとして活躍している産学連携拠点を評価・選抜(国際展開型と地域貢献型の2類型)する 「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜事業」 を令和2年度より行っている。また、令和5年度より「地域の中核大学の産学融合拠点の整備」についての補助事業終了後から新たにプラットフォーム型としての選抜も始まっている。

令和7年度についても、令和7年7月18日から8月27日までの間、公募期間が設けられ、第7回目となるJイノベ 地域オープンイノベーション拠点として、国際展開型3拠点、地域貢献型4拠点が選抜された。

本連載では、新たに選抜された拠点の取り組みを紹介する。

Jイノベ 地域オープンイノベーション拠点選抜制度

J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜制度 地域貢献型拠点~香川大学イノベーションデザイン研究所(KIDI)

香川大学イノベーションデザイン研究所(KIDI)は、地域が抱える複雑な課題に「組織対組織」で挑む産学共創の拠点として、2018年に設立された。KIDIは、研究(概念設計)と現場実践を往復させ、その反復の中で知と方法をスパイラルアップし、地域活性化へ還流する「知の循環」を中核に据えている。人口減少や地域産業の構造変化など、地方が直面する課題が多様化するなかで、大学の知と企業の技術・事業開発力を結び付け、社会課題の解決と新たな価値創出を同時に目指すことを目的としている。

大学と企業が1対1で連携する従来型の共同研究ではなく、目的に応じて学部横断の研究チームを編成し、理工系から人文社会系まで多様な研究者が参画する点が特徴である。工学や情報科学などの技術分野に加え、経済学や地域政策といった社会科学の視点も取り入れることで、技術開発だけでなく社会実装までを見据え、現場で得た示唆を研究の再設計に戻す体制を構築している。

また、KIDIでは複数企業が同時に参加する共創型の研究の枠組みを採用している。競合企業同士の研究者がフラットに議論し、大学研究者とともに課題解決に取り組む仕組みは全国的にも先進的である。企業の枠を越えたオープンな議論の場を通じて、新たな研究テーマの創出や産業応用につながる知見が生まれることが期待されており、地域に根差したオープンイノベーションの拠点としての役割を担っている。

1階多目的スペース
2階共創環境スペース
3階産学共創リサーチ・ファーム関連スペース(管理共用スペース)

「産学共創リサーチ・ファーム」が生むイノベーションの好循環

KIDIの中心となる仕組みが「産学共創リサーチ・ファーム」である。企業の現役研究者をクロスアポイントメントで大学に迎え、教員や博士課程学生と対等な立場でプロジェクトを推進する。企業研究者は非常勤教員として研究所に所属し、大学の研究者や学生と日常的に議論しながら研究を進めることで、企業が抱える実践的な課題と大学の研究を結び付ける役割を担っている。現場起点の示唆が研究テーマに反映され、研究成果は実証を通じて磨き直される。その往復が前提の設計である。

研究テーマは単一企業の課題にとどまらず、複数の企業や研究者が関わる形で設定されることも多い。異なる分野の研究者が同じチームで議論を重ねながら研究を進めることで、新たな研究テーマや応用分野が生まれやすい環境が整えられている。

すでにマツダ、リコー、東急建設、あいおいニッセイ同和損害保険などの大手企業から延べ19名が参画し、企業研究者と大学研究者が継続的に共同研究を進めている。そこから複数のコンソーシアムが派生し、循環型のイノベーションモデルが形成されている。

香川大学イノベーションデザイン研究所(KIDI)の中核をなす「産学共創リサーチ・ファーム」の全体像

赤外分光からモビリティ社会まで広がる研究領域

研究領域も多岐にわたる。例えば、世界最小クラスの赤外分光イメージング装置の開発では、非接触で成分を特定できる赤外分光技術をスマートウォッチサイズまで小型化する研究が進められている。血糖値測定や設備診断などへの応用が期待されており、15機関が参加する「赤外分光イメージングコンソーシアム(IRC)」が社会実装を後押ししている。実証で得た知見を設計に戻し、応用領域の拡張と再設計を繰り返している。

モビリティ分野では、19機関が参画する「ヒト・ソサイエティ・モビリティに関するシミュレーション技術の高度化コンソーシアム(HMSC)」が、交通や人の移動を対象としたシミュレーション技術の高度化に取り組んでいる。災害時の避難行動の分析や高齢運転者支援などをテーマとした実証研究も進められており、現場データや行動理解をモデルの再設計へフィードバックする循環が回っている。

さらに2025年には、農業センシング技術の社会実装を目指す「かがわアグリテックデザインコンソーシアム(KADeC)」が発足した。営農現場の課題を研究資源へと変換し、実証、データ解析、センサの新規用途開発等を通じて、現場適合性を高めていく。このほかにも、サステナブル建材の開発や地域文化の価値創出など、地域課題から地球規模の課題まで幅広いテーマに取り組むプロジェクトが展開されている。

香川大学がコア技術を有する世界で世界最小・最高感度の赤外分光イメージング装置

「希少糖」の成功体験を方法論の源流として位置づける

KIDIの設立背景にあるのは、香川大学が世界的にリードしてきた「希少糖研究」で培われた設計思想である。希少糖研究では、多領域の研究者が協働し、基礎から応用、地域産業への展開までを一体的に進めるプロセスが確立された。KIDIは、このプロセスを単なる個別プロジェクトの成功にとどめるのではなく、基礎研究から社会実装までを一気通貫で進めるための方法論として整理し、他の研究分野にも応用できる形で構造化することを目的として設立された拠点である。この成功プロセスを形式知化し、他のプロジェクトにも波及させることがKIDIの設計思想の根幹にある。

さらにKIDIでは、科学技術分野だけでなく、文化や芸術の視点を取り入れた地域課題解決にも取り組んでいる。東京藝術大学と連携し、「アート×科学」による新たな価値創出を目指す取り組みを進めており、高松市庵治町には「芸術未来研究場せとうち」も整備されている。瀬戸内地域の文化資源や地域社会と結びつけながら、科学技術と芸術を横断した新しい研究・社会実装の可能性を探っている。

東京藝術大学×香川大学 せとうち ART & SCIENCE
https://setouchi.ac/

地域に開かれた拠点が「知の循環」を加速する

2022年に開所したKIDIの拠点施設は、マッチングスペース、共創環境、イベントスペースなどで構成され、産官学の関係者が日常的に交流する場として機能している。地域にも開かれた施設として、ワークショップや交流イベントの会場としても活用されている。ここで生まれる実践と議論が研究へ戻り、再設計された成果が地域に還流する。このような往復を促す場の設計が、地域ビジネスエコシステムとしての「知の循環」を加速させている。

筧善行所長は次のように語る。 「当拠点は、地域に開かれた研究拠点として、挑戦的な研究から社会実装までをつなぐ循環的な仕組み(地域ビジネスエコシステム)を整え、地域課題の解決とイノベーション創出を進めています。当拠点がハブとなることで、競合関係にある企業の研究者同士もフラットに意見交換しながら共創するオープンイノベーションが加速しています。現在は複数の産学共創コンソーシアムを運営しています。また、文部科学省『地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)』では東京藝術大学の連携校として、『アート×科学』を基軸に地域課題の解決を促す役割も担っています。これからも地域に寄り添い、より良い未来につながる挑戦を続けてまいります。」

「共に創り、共に拓く」を掲げるKIDIは、希少糖研究で培った実践知を礎に、赤外線、農業、モビリティ、アートなど幅広い分野で、研究と現場実践の往復によるスパイラルアップを軸として研究と社会実装を進めている。瀬戸内からオープンイノベーションの新しい姿を発信する拠点として、その取り組みは広がりを見せている。

香川大学イノベーションデザイン研究所長の筧善行氏

香川大学イノベーションデザイン研究所(KIDI)
https://kidi.kagawa-u.ac.jp/

Jイノベ選抜拠点の記事一覧はこちら
https://finders.me/series/kqJTU6YwMDMwNTU