経済産業省では、長期的・持続的な日本経済の発展のため、大学や高等専門学校等の機関を中心とした研究拠点の中から、企業ネットワークのハブとして活躍している産学連携拠点を評価・選抜(国際展開型と地域貢献型の2類型)する 「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜事業」
を令和2年度より行っている。また、令和5年度より「地域の中核大学の産学融合拠点の整備」についての補助事業終了後から新たにプラットフォーム型としての選抜も始まっている。
令和7年度についても、令和7年7月18日から8月27日までの間、公募期間が設けられ、第7回目となるJイノベ 地域オープンイノベーション拠点として、国際展開型3拠点、地域貢献型4拠点が選抜された。
本連載では、新たに選抜された拠点の取り組みを紹介する。
J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜制度 地域貢献型拠点~横浜国立大学 高等研究院
横浜国立大学 高等研究院は、先端技術研究と社会課題解決型研究の両方を推進する研究拠点として整備されてきた。「先進性と多様性が織りなす知の統合と社会価値の創造」を掲げ、2014年に設立された先端科学高等研究院(IAS)と、2023年に新設された総合学術高等研究院(IMS)の二院体制で構成されている研究拠点である。人文社会系から理工系まで、多様な専門性をもつ教員が集結し、基礎研究から社会実装までを一気通貫で推進している。
「先進性と多様性が織りなす知の統合と社会価値の創造」を掲げる研究拠点
IASには先進化学エネルギー研究センターや量子情報研究センターなどが、IMSには台風科学技術研究センター、ヘルステクノロジー、半導体・量子集積エレクトロニクスなど、現代社会の主要課題に直結する研究センターが設置されており、防災・半導体・量子・AI・脱炭素まで幅広い領域をカバーする。中でも独自性が際立つのが、IMSに設置された日本初の台風専門研究機関・台風科学技術研究センター(TRC)である。同センターは、台風災害の低減と台風エネルギーの再生可能エネルギー化という二つの使命を掲げ、気象研究にとどまらず、電気化学・船舶工学・法学・経済経営学など多様な分野を融合した研究を展開している。気象庁との連携や万博への参加など、社会への発信にも積極的である。
理工系×人文社会系の融合が生む 「社会実装力」
横浜国立大学 高等研究院の強みは、理工系の技術開発力に加え、経営学・法学・都市科学といった人文社会系の知を組み合わせ、基礎研究から制度設計、社会実装までを一気通貫で進められる点にある。技術開発だけでなく、その成果を社会に導入する際に必要となる制度設計やビジネスモデル、社会受容の視点まで含めて研究を展開できることが特徴だ。研究テーマごとに分野横断の研究チームを組成し、科学技術と社会科学の知見を組み合わせながら、現実の社会課題に対応する研究を進めている。
さらに、専属の研究戦略企画マネージャーや産学官連携コーディネーターが配置されており、企業や自治体のニーズ把握の段階から研究プロジェクトに参画する体制が整えられている。これにより、共同研究の立ち上げから実証実験、社会実装までのプロセスを円滑に進めることが可能になっている。研究者と企業・自治体との間をつなぐ役割を担う専門人材が関与することで、研究成果を社会の現場へと展開しやすい仕組みが構築されている点も特徴の一つである。
また、横浜・川崎地域は半導体、エネルギー、通信、材料などの分野で企業や研究機関が集積する国内有数の産業エリアであり、高等研究院はこうした地域の産業基盤とも密接に連携している。地域企業との共同研究や実証フィールドを活用しながら研究成果の社会展開を進めると同時に、国内外の大学や研究機関との連携も進めており、全国・国際展開につながる研究拠点としてのポテンシャルも高い。
都市(地域)を実験場とし、知を社会に実装する「共創の拠点」として
梅原出学長(兼 高等研究院長)は、今後の展開についてこう語っている。
「高等研究院には、学内の多様な知を結集し、世界に伍する最高水準の研究拠点が育ちつつあります。これらは単なる研究成果の蓄積ではなく、社会と直接つながり、実装されてこそ意味を持つ「実践知」です。この実践性こそ、都市(地域)を実験場とし、知を社会に実装する「共創の拠点」として、世界水準の研究大学へとしなやかに道を拓く力になるのです。
次世代半導体や量子、気候変動対応などの先端技術を基盤に、研究開発機能と先端産業が集積する横浜・川崎地域の強みを生かし、『都市型国立大学』の研究戦略フロントランナーとして企業と新たな価値創出に取り組みます。」
次世代半導体、量子、気候変動対応などの先端技術と、都市型国立大学としての地域性を組み合わせ、新たな価値創造を企業と共に進めていく構想を描いている。台風、半導体、量子コンピュータ、ヘルスケアといった幅広い社会課題に向き合う知の統合拠点として、地域と世界の課題を同時に解決するイノベーションの源泉となることが期待されている。
横浜国立大学 高等研究院
https://ias.ynu.ac.jp/
https://ims.ynu.ac.jp/
Jイノベ選抜拠点の記事一覧はこちら
https://finders.me/series/kqJTU6YwMDMwNTU