声も映像も記録しない「Minut」が、トラブルの芽だけを捉える
京都市内でホスト不在型の宿泊施設を運営するホストを対象に、Airbnb Japan株式会社とmui Lab株式会社が、IoT騒音センサー「Minut(ミニット)」を使った実証実験を2026年10月13日に発表した。京都は国内でも観光需要が集中する地域であり、民泊と近隣住民との間で騒音をめぐるトラブルが起きやすい土地でもある。両社が京都の現場でデータを集めるところから課題に向き合う背景には、この地域特有の事情がある。
ミニットの最大の特徴は、音声や映像を一切記録しない点にある。カメラも録音機能も持たず、室内の音量(デシベル)と音が続いた時間、接続デバイス数、赤外線による在室状況の検知だけから室内の状況を推定する仕組みだ。設置場所もリビングルームや玄関に限られ、寝室やバスルームといったプライベートな空間は対象から外されている。
通知が届くのは、約75デシベルを超える音が10分以上続いた場合のみである。75デシベルは、電車や航空機の車内・機内に相当する水準であり、一瞬の大きな声や物音では通知されない。近隣への影響が懸念されるほどの音が一定時間続いたときだけホストに知らせることで、問題が深刻化する前に対処できる仕組みを目指している。
京都発のスタートアップとグローバルプラットフォームが挑む、地域と共生する宿泊のかたち
本実証実験は、京都市内でホスト不在型リスティングを運営する協力ホストを対象に、約60施設でミニットを1年間無償提供する形で進められる。機器本体と1年間のサブスクリプション費用はすべて無償とされ、参加ホストは今後も追加で募集される予定だ。実施期間は各施設への設置開始から1年間で、この間に蓄積される騒音の発生頻度やホストの対応時間のデータを基に、トラブルを未然に防ぐ運用ルールの検討に役立てる計画である。
ミニットは世界100以上の国と地域、3,000都市以上の宿泊施設で導入されており、Airbnbは2022年からミニットの開発元であるスウェーデンのMinut社と協業し、世界60以上の国と地域で提供してきた。日本国内での実証実験という形での検証は、今回が初めてとなる。
mui Lab代表取締役の大木和典氏は、暮らしに静かに寄り添うテクノロジーのかたちを京都から探ってきたとした上で、必要なのは誰かを監視する仕組みではなく、問題が起きる前に気づける仕組みだと述べている。Airbnb Japan代表取締役の中川晋太郎氏も、問題が起きてから対応するのではなく、起きる前に気づける仕組みの必要性を強調しており、現場で無理なく続けられる運用を見据えている点が両社に共通する姿勢だ。
民泊をめぐる近隣トラブルは、観光需要が集中する地域であれば京都に限った問題ではない。プライバシーに配慮しながら問題の芽を早期に察知する仕組みが実際にどこまで機能するのか、この1年間の検証結果は、宿泊業と地域社会の関係を考えるうえでの手がかりになりそうだ。
Minut(ミニット)による騒音モニタリング実証実験
実施主体:Airbnb Japan株式会社、mui Lab株式会社
対象:京都市内でホスト不在型リスティングを運営するホスト
実施期間:各施設の機器設置開始から1年間
設置場所:リビングルームや玄関(寝室・バスルームなどのプライベート空間は対象外)
設置数:約60施設(参加ホストを追加募集予定)
設置費用:無償(機器および1年間のサブスクリプション費用を含む)
通知の基準:約75デシベルを超える音が10分以上続いた場合にホストへ通知
公式サイト
https://muilab.com/ja/