40年ぶりの布施で見えた、日常を旅に変える 「まちごとホテル」 の価値
リノベーション事業と宿泊ブランド 「SEKAI HOTEL」 を展開するクジラ株式会社は、 「SEKAI HOTEL Osaka Fuse」 の宿泊1万人突破を記念し、マンガ家・タナカカツキさんによる特別記事を公開した。
タナカさんは大阪府東大阪市出身のマンガ家であり、 「サ道」 の原作者、 「コップのフチ子」 の生みの親として知られている。今回の企画では、SEKAI HOTELの 「おかえりなさい」 企画の第1弾として、幼少期を過ごした布施の街を約40年ぶりに訪れた。
公開された特別記事は全9本。商店街、銭湯、電気風呂、そしてマンガ家としての原点となった街の記憶を、タナカさん自身の視点でたどる内容である。観光名所をめぐるのではなく、誰かの日常に入り込むように街に滞在する。SEKAI HOTELが掲げてきた旅のあり方を、ひとりのマンガ家の帰郷を通して描いた企画となっている。
今回タナカさんが起用された理由は、単なる話題づくりではない。布施は、タナカさんにとって幼少期の記憶と、マンガ家としての感覚が育った街である。 「サ道」 がサウナで整う身体感覚を描き、 「コップのフチ子」 が日常のささいな風景に潜む可笑しみをすくい上げてきたように、タナカさんの作品には、特別な非日常ではなく、ふつうの日常のなかにある面白さや心地よさを見つめるまなざしがある。
その作品性は、SEKAI HOTELの思想とも重なる。SEKAI HOTELが提供してきたのは、観光地ではない街の、なんでもない日常に旅の目的を見いだす滞在体験である。外から訪れた著名人が街を紹介するのではなく、布施に記憶を持つ人が大人になってもう一度その街を歩くことで、見慣れた風景が旅の対象として浮かび上がる。
記事では、商店街の店先、薪で沸かす銭湯、サウナ、電気風呂など、観光ガイドには載りにくい布施の日常が取り上げられている。 「私をマンガ家にした『布施』という街の記憶」 、 「『あのジイサン』への到達。『戎湯』で味わう、薪の香りと電気の悦び」 、 「サウナのメッカで『電気』に浸る『なにわ健康ランド湯~トピア』」 など、タナカさんが自身の身体感覚を通して街を確かめ直していく過程が記録されている。
子どもの頃に見ていた街と、大人になってから歩く街は、同じ場所であっても見え方が異なる。今回の記事に通底しているのは、 「何もない街」 だと思っていた場所が、歩き直すことで 「記憶と発見のある街」 へと変わっていく感覚だ。記事タイトルにも使われている 「再編集」 という言葉は、この企画を象徴している。街そのものが大きく変わったのではなく、街の見方が変わったのである。
SEKAI HOTELの宿泊体験も、旅行者に同じような変化をもたらす。ホテルの中だけで宿泊体験を完結させるのではなく、商店街の飲食店、銭湯、喫茶店などと連携し、まち全体を一つのホテルに見立てる。旅行者はフロントでチェックインしたあと、商店街を歩き、地域の人々と関わりながら、その街の日常に入り込むように滞在する。
「SEKAI HOTEL Osaka Fuse」 は、そうした体験を大阪・布施で展開してきた。今回の宿泊1万人突破記念企画 「10,000 dives into the Ordinary.」 は、これまで宿泊者が布施という街にどのように飛び込んできたのかを振り返る取り組みでもある。タナカさんの特別記事は、その第1弾として、観光地ではない街に泊まる意味を体験として伝えている。
クジラ株式会社代表取締役の矢野浩一氏は、2018年9月のSEKAI HOTEL Osaka Fuse開業以来、 「観光地ではない場所に、どうすれば人が訪れるのか」 という問いに向き合ってきたとコメントしている。地域のありのままの日常をコンテンツとするSEKAI HOTELは、消費・消耗する観光ではなく、まちの日常と旅人が自然に交わる 「共存する観光」 を目指す取り組みである。
観光名所を消費するのではなく、誰かの日常にそっと入り込み、ありふれた風景の見え方が少し変わる。タナカカツキさんの40年ぶりの布施訪問は、SEKAI HOTELが届けてきた旅の価値を、説明ではなくひとつの体験として可視化するものとなった。
SEKAI HOTEL Osaka Fuse 宿泊1万人突破記念企画 「10,000 dives into the Ordinary.」
https://www.sekaihotel.jp/celebration/