CULTURE | 2026/10/16

一脚の椅子に、四百年分の手が重なる。起立木工がたどってきた時間

起立木工の歴代椅子や試作品を公開、静岡・匠宿で「WAZA+展」開催

FINDERS編集部

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静岡400年の木工史を、一脚の椅子からたどる「WAZA+展」

一脚の椅子には、素材を見極める目から仕上げの手仕事まで、幾重もの技術と時間が積み重なっている。静岡市駿河区丸子にある「駿府の工房 匠宿」の匠宿伝統工芸館では、2026年11月5日(木)から16日(月)まで、起立木工の歴代の椅子や試作品、製品になる前の部材までを紐解く「WAZA+展」が開催される。完成した家具だけでは見えてこない技術と時間に焦点を当てた展覧会だ。

静岡の木工・漆工・彫刻の歴史は、1634年の静岡浅間神社造営をきっかけに職人たちが駿府に集まったことに始まるという。その技術は漆器や鏡台といった工芸品へと形を変えながら受け継がれ、現在の家具づくりの土台になっている。本展は、約四百年にわたって積み重ねられてきた産地の歴史と、一脚の椅子が形になるまでの工程という、二つの時間軸から「技」を見つめ直す試みである。

展覧会名の「WAZA+」は、静岡に積み重ねられてきた伝統技術と、現在の家具づくりをつなぐ言葉だ。手仕事だけでなく、機械加工や仕上げ、設計、素材を見極める判断力まで、家具が形になるまでの多様な「技」を指している。

会場では、起立木工が手がけてきた歴代の椅子に加え、製品になる前の部材や模型、試作品を見ることができる。普段は目にすることのない加工・仕上げの工程も紹介され、一脚の椅子が完成するまでにどれだけの工程と判断が重ねられているかを知ることができる。

さらに、現在の工芸作品と家具を組み合わせた展示も用意されており、静岡で積み重ねられてきた技術が、いまの暮らしや家具づくりにどのようにつながっているのかを見ることができる。木工だけでなく、素材選びや設計といった目に見えにくい判断までを「技」として捉え直す構成は、ものづくりに関わる読者にとっても仕事のヒントになりそうだ。

会場となる「駿府の工房 匠宿」は、1999年に開業した静岡市の伝統工芸体験施設である。2021年に建築設計業の株式会社創造舎が指定管理者となり、「歴史と未来を結ぶ場所」をコンセプトに22年ぶりにリニューアルした。駿河竹千筋細工や陶芸、藍染、木工指物、漆など各分野の職人を工房長に招き、体験できる工房に加えて、和菓子屋「蓬きんつば ときや」やカフェ「HACHI & MITSU」も敷地内に構える複合施設となっている。

周辺には、古民家をリノベーションした「工芸ノ宿 和楽」や愛犬と泊まれる「1HOTEL」、丸太工法で組み上げた入浴・サウナ施設「ふきさらし湯」なども点在し、工芸に触れながら滞在そのものを楽しめる地域になっている。

「WAZA+展」の入場料は無料で、開催期間中は9:30から17:30まで観覧できる(火曜定休、火曜祝日は営業し翌平日休館)。椅子という身近な家具を通して、静岡に四百年続く技術と、ものづくりの背景にある時間に触れてみたい人にとって、訪れる価値のある展覧会である。


WAZA+展 ― 静岡で受け継がれてきた技術と、いまの家具 ―
会期:2026年11月5日(木)〜11月16日(月)
休館日:火曜(火曜祝日は営業、翌平日休館)
開館時間:9:30〜17:30
会場:駿府の工房 匠宿内 匠宿伝統工芸館(静岡県静岡市駿河区丸子3240-1)
入場料:無料
企画・出展:起立木工株式会社
後援:静岡県家具工業組合、静岡特産工業協会、公益財団法人静岡産業振興協会

公式サイト
https://takumishuku.jp/