1,400年の歴史を持つ温泉地が、"語れる人材"を求める理由
那須温泉郷は、開湯から約1,400年の歴史を持つ、栃木県を代表する温泉地のひとつである。多様な泉質と豊かな温泉文化を有する一方で、その魅力を来訪者にどう伝えるかは、地域の宿泊施設が共通して抱えてきた課題でもあった。
一般社団法人那須町観光協会は、この課題に向き合う形で「那須町 100人の温泉ソムリエ誕生プロジェクト」を実施する。町内の宿泊施設スタッフや観光関連事業者を対象に、温泉について体系的に学ぶセミナーを開き、接客の現場で温泉の魅力を自信を持って語れる人材を育てる取り組みだ。
「温泉の知識が、接客の質を高め、那須の魅力を伝える力になる」という理念のもと、単発の研修で終わらせず、地域全体で温泉の価値を発信する体制づくりを目指している。セミナーは2026年9月24日、ホテルエピナール那須で開催され、目標参加人数は100名。講師は温泉ソムリエ協会の温泉ソムリエ家元・遠間和広氏が務める。温泉の基礎知識や泉質、入浴方法といった専門知識に加え、那須温泉郷ならではの特徴や魅力についても理解を深める内容となっている。
受講後は「温泉ソムリエ認定証」が授与され、参加者は那須町の「温泉ソムリエ」として、今後、観光協会(DMO)が実施する情報発信や観光振興活動への協力を呼びかけられる。単なる研修修了で終わらせず、地域に100人規模の"温泉に精通した人材ネットワーク"を築くことが狙いだ。
フロントスタッフや客室係、支配人、若手スタッフなど、日々お客様と接する立場の人材を主な対象としている点も重要だ。知識を持つ人が現場に増えることで、施設ごとの対応にとどまらず、地域全体で一貫した"温泉の語り方"が広がっていく。
このプロジェクトのもう一つの特徴は、観光振興のために活用される宿泊税を、地域の観光人材育成という具体的な形に還元している点である。「学び」から「おもてなしの向上」へとつなげることで、税の使途を"見える化"する取り組みとしても位置づけられている。
那須町観光大使のゆるキャラ「きゅーびー」もセミナーに参加し、参加者とともに温泉について学ぶ予定だ。地域ぐるみでプロジェクトを盛り上げる姿勢もうかがえる。
温泉地としてのブランド力は、景観や泉質だけでなく、そこで働く人がどれだけ自信を持って語れるかによっても左右される。那須町を訪れる機会がある人は、次の滞在で、温泉について詳しく教えてくれるスタッフに出会えるかもしれない。そんな変化の兆しを感じさせる取り組みである。
一般社団法人那須町観光協会
https://www.nasukogen.org/