ベンチシートと吊り革を残した「普通列車サウナ」、薪ストーブの熱でくつろぐ
電車のベンチシートに腰掛け、吊り革につかまりながら“立ちサウナ”を楽しむ――そんな非日常的な体験が、2026年12月、富士山麓に生まれる。富士急行(山梨県富士吉田市)が富士急行線下吉田駅の線路上で開発を進める日帰りサウナ施設「サ電(SADEN)」について、10月23日、3両の車両を使ったサウナ室や水風呂の詳細が公開された。運営は、富士急グループでアウトドアリゾート事業を展開する株式会社ピカが担う。
既報の通り、本施設は2024年12月に定期運用を終えた車両「1000系1001号編成」を活用するもので、営業運行を終えた電車をサウナ施設に転用する試みは日本初(同社調べ)だという。富士急行創立100周年事業の一環として位置づけられ、長年親しまれてきた車両を富士山麓ならではの新たな体験へと再生する試みである。
メインサウナ室となる「普通列車サウナ」は、向かい合うベンチシートや吊り革など、通勤電車のレイアウトをそのまま生かした空間である。熱源には薪ストーブを採用し、座面は低めに、温度帯も比較的穏やかに設定することで、サウナに不慣れな人でも過ごしやすいよう工夫されている。窓際にはホームや行き交う電車を眺められるカウンター席が設けられ、電車をモチーフにしたオートロウリュや、運転席でギミックを操作できる仕掛けの導入も検討されている。
二段ベッドで眠る「寝台列車サウナ」と、車両をつなぐ「水風呂列車」
「普通列車サウナ」と隣接するのが、寝台列車をモチーフにした「寝台列車サウナ」である。上段と下段の二段ベッドにそれぞれ寝転がって“寝サウナ”を楽しめる構造で、天井に近い上段はしっかりとした熱さを、下段は穏やかな温度でじっくり温まる体感を想定している。電気ヒーターによるセルフロウリュも導入される予定だ。
2つのサウナ室をつなぐのが「水風呂列車」である。車内には深さ約70cmの水風呂が設けられ、サウナ室から水風呂へ、電車を“乗り継ぐ”ような感覚で移動できる構造になっている。車両のすぐそばには、踏切をモチーフにしたガッシングシャワーも設置予定で、冷え込む冬場には水風呂をスキップしてシャワーで体を冷やし、そのまま外気浴に入るという楽しみ方も想定されている。
3両それぞれ異なる温度や姿勢でサウナを味わい、水風呂を挟んで外気浴へと移動する構成は、設備を並べただけの施設とは一線を画す。鉄道車両という限られた空間だからこそ生まれる、列車を旅するような一連の時間の流れそのものが、「サ電」の体験価値だといえる。
引退から2年、京王電鉄生まれの車両が富士急サウナリゾート7施設目として再生する
サウナに転用される「1000系1001号編成」は、京王電鉄から譲り受け、1994年から富士急行線で運行を開始した車両である。長年主力車両として活躍し、2012年には京王電鉄時代の塗装に復元されたのち、2024年12月15日に定期運用を終えた。
「サ電」は、富士急グループが展開する「富士急サウナリゾート」の7施設目となる。同リゾートは「ととのいの最高峰へ」をコンセプトに、富士山エリアの「ホテルマウント富士」「ふじやま温泉」「PICA Fujiyama」、相模湖エリアの「うるり」、静岡エリアの「熱海シーサイドスパ&リゾート」「THE GLAMPING 箱根十国峠」の計6施設を展開しており、今回の「サ電」が新たに加わる。また、日本最大級のサウナ検索サービス「サウナイキタイ」とのコラボレーションにより、同サイトのプロデュース協力のもとで施設づくりが進められている。
開業日や営業時間、料金、予約方法などの営業情報は、2026年11月下旬頃に改めて発表される予定である。引退した電車の座席や吊り革に身を委ねながら、列車を“乗り継ぐ”ようにサウナと水風呂を巡る――そんな珍しい“ととのい”体験を求める人は、今後の発表にも注目しておきたい。
サ電(SADEN)
開業日:2026年12月中旬(詳細日程は改めて発表予定)
所在地:山梨県富士吉田市新町二丁目8-12(富士急行線 下吉田駅)
アクセス:車:中央自動車道・西桂スマートICから約10分、河口湖ICから約15分/電車:JR中央本線大月駅で富士急行線に乗り換え、下吉田駅下車徒歩0分
サウナ室構成:普通列車サウナ・寝台列車サウナ・水風呂列車の3両
企画・開発:富士急行株式会社
運営:株式会社ピカ(富士急グループ)
公式サイト
http://saden.jp/