CULTURE | 2026/10/29

新聞広告の主役は、出版社ではなく 「本屋さん」 だった

辻村深月『ファイア・ドーム』、全国書店員400人の声を読売新聞に掲載

FINDERS編集部

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書店員400人の声が、新聞一面に結集した全面広告

新聞広告の主役が、出版社ではなく「読者と同じ棚の前に立つ書店員」になることがある。2026年10月24日(土)付の読売新聞に掲載された全面広告は、辻村深月の最新長編小説『ファイア・ドーム』(小学館刊)を、全国47都道府県・400名以上の書店員の声で紹介するという、通常の書籍広告とは異なる構成を取っている。この日から始まる「秋の読書推進月間」にあわせた特別企画で、著者自身が書店について綴った書き下ろしエッセイも同時に掲載された。

本キャンペーンのタイトルは「"隣の本"に、人生を変える出会いがある」というものである。この言葉の通り、広告原稿はエリアごとに作り分けられ、各地域の書店員が本書に寄せたメッセージがそれぞれの紙面に掲載されている。自分の住む街の書店員の言葉が、たまたま広げた新聞の一面に載っているかもしれない。そうした偶然の発見を仕込んだ仕掛けは、広告と読者の間にある距離を一段縮める試みともいえる。

同日の紙面では、辻村深月と俳優の奈緒による「読書をめぐる対談」も掲載され、読書にまつわる記事や広告企画が多数組まれている。全国一律のコピーで押し切るのではなく、地域の書店という小さな単位の声を積み上げて一つの広告に仕立てる手法は、マスメディアを使った宣伝のあり方を考えるうえでも興味深い事例である。SNSでの口コミが主流になった時代に、紙の新聞という媒体で"口コミの集合体"を表現した点に、このキャンペーンの新しさがある。

7年をかけて書かれた『ファイア・ドーム』が描く"噂"という炎

『ファイア・ドーム』は、2026年6月5日に小学館から刊行された上下巻構成の長編小説で、価格は各巻2,090円(税込)、頁数は上巻464ページ・下巻432ページに及ぶ。刊行後は全国の書店でベストセラー1位を相次いで獲得し、第39回柴田錬三郎賞を受賞するなど、高い評価を受けている作品である。物語は、25年前に地方都市で起きた百貨店受付嬢誘拐殺人事件を発端に広がった"噂"という大量の炎が、ようやく静けさを取り戻したはずの町で新たな事件を呼び起こす、というものだ。

辻村深月は本作について、連載に4年、改稿に3年、合わせて7年をかけて書き上げたと明かしている。準備期間中にも現実では事件が相次ぎ、"噂"を描いた物語の世界が現実と共鳴するような感覚があったという。著者自身が「今、読んでほしい」と語るように、作品のテーマは過去の事件だけでなく、これから起こり得る出来事とも地続きになっている。

辻村深月は2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でデビューし、『鍵のない夢を見る』で直木賞、『かがみの孤城』で本屋大賞第1位を受賞するなど、著書多数の作家である。全国の書店で上下巻を同時購入すると、数量限定で「クリアスリーブ」が配布される特典も用意されている。特設サイトでは、あらすじ漫画やTVCM、400名を超える書店員のコメント、読了者だけが読める"ネタバレありページ"なども公開中だ。一冊の小説をきっかけに書店へ足を運ぶ人が増えるとすれば、それこそがこの企画が目指す"隣の本"との出会いになる。

辻村 深月(ツジムラ ミヅキ)
2004年6月5日、「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞。18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞第1位。26年『ファイア・ドーム』で第39回柴田錬三郎賞を受賞。『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『朝が来る』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『嘘つきジェンガ』『この夏の星を見る』など著書多数。
写真/長田果純

辻村深月『ファイア・ドーム』×「秋の読書推進月間」特別企画
(キャンペーンタイトル:「隣の本」に、人生を変える出会いがある)
掲載日:2026年10月24日(土)
掲載媒体:読売新聞(全面広告)
対象書籍:『ファイア・ドーム』(辻村深月・著、小学館刊、上下巻)
主な内容:著者書き下ろしエッセイ、全国47都道府県400名以上の書店員のメッセージ、辻村深月×奈緒(俳優)の読書対談
購入特典:上下巻同時購入でクリアスリーブを配布(店舗ごとに数量限定)
主催:株式会社小学館

公式サイト
https://www.shogakukan.co.jp/pr/fire_dome