CULTURE | 2026/11/02

途絶えかけた祭りを教室と移住者が継ぐ 南信州に生まれた文化継承の仕組み

長野県南信州、「世界の持続可能な観光地100選2026」に2年連続選出

FINDERS編集部

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民俗芸能の宝庫・南信州が2年連続で世界の持続可能な観光地100選に

株式会社南信州観光公社(長野県飯田市)が運営する地域DMO「南信州」エリアが、オランダに本部を置く国際認証機関Green Destinationsの「世界の持続可能な観光地100選2026(Green Destinations Top 100 Stories 2026)」に、2026年10月29日(木)、2年連続で選出された。同社は、日本国内の地域として2年連続選出は初めてだとしている。単なる観光地としての評価ではなく、過疎・少子高齢化によって存続が危ぶまれていた民俗芸能を、次世代への継承と地域の自立につなげた「持続可能な循環モデル」と、複数の市町村にわたる広域連携のあり方が評価されたという。

南信州は、長野県内にある10件の国指定重要無形民俗文化財のうち6件を有する地域である。昭和初期には民俗学者・折口信夫が現地調査を行い、古代の呪術儀礼から中世の猿楽・神楽に至る芸能発展の諸段階が凝縮されているとして、「日本芸能史の縮図」と位置づけたことでも知られる。

一方で、かつては特定の家系や地域住民だけが祭りを担う厳格な継承制度があり、それがかえって過疎化・少子高齢化のなかで担い手不足を加速させる要因になっていた。地域が選んだのは、芸能を過去の姿のまま保存することでも、観光客向けの見世物にすることでもなく、「地域コミュニティのウェルビーイングの向上」を第一の目的とした、動的に循環する仕組みづくりだったという。

教室で学ぶ担い手、移住者が継ぐ芸、収益を祭具に戻す仕組み

長野県大鹿村では、2017年に国の重要無形民俗文化財に指定された「大鹿歌舞伎」を、中学校の「総合的な学習の時間」の通常カリキュラムに組み込んでいる。これにより、若い世代が伝統の継承に直接参加できる仕組みが生まれ、生徒が舞台の中心的な役割を担うようになった。

南信州の各地域では伝統芸能の継承に力を入れる一方で、地域外からの移住者が芸能の担い手として受け入れられている例もある。住民が直接技術を伝える、息の長い共生型のモデルが各地に広がっている。

地域DMOはこれらの芸能の歴史を深く学び体験できる特別プログラムを提供しているが、無制限な観光は文化の消費財化や住民生活への負荷を招くため、ツアーの受け入れ人数には厳格な上限を設けている。観光収益の一部は、高価な祭具の修繕や道具の維持管理に直接再投資され、自律的な財政循環をつくっているという。

大鹿歌舞伎「中学生公演」提供:株式会社南信州観光公社
大鹿歌舞伎「定期公演」提供:株式会社南信州観光公社』
大鹿歌舞伎「公演準備」提供:株式会社南信州観光公社

祭りが「帰る場所」になる、次世代と広域ネットワークへの広がり

教育との連携は、技能の伝承にとどまらない効果も生んでいる。伝統文化は若者のアイデンティティの中核として定着しつつあり、祭りは「帰る場所」として位置づけられるようになったという。進学などで一時的に地域を離れた若者が、「地元の祭りで踊るため」「人形を操るため」に移住・帰郷する例や、生活の拠点を地域外に置きながら祭りのたびに帰郷して継続的に関わる例も見られる。

さらに南信州では、個々の芸能を守る段階を超え、国や県の指定を受けていない小規模な民俗芸能までを包摂する文化財ネットワーク「南信州民俗芸能継承推進協議会」を設立した。広域で民俗芸能を支える仕組みを地域全体に広げる取り組みは、すでに動き出している。

地域が得た教訓は、伝統を守るためには変える勇気と、守るためのルールの両方が必要だということである。観光消費で終わらせず文化を次世代につなぐ南信州の仕組みは、地域や組織のあり方を見直したい読者にとっても、参考にしてみたい事例である。

遠山の霜月祭 提供:株式会社南信州観光公社
遠山の霜月祭 提供:株式会社南信州観光公社
遠山の霜月祭 提供:株式会社南信州観光公社

世界の持続可能な観光地100選 2026(Green Destinations Top 100 Stories 2026)
選定機関:Green Destinations(本部:オランダ)
選出地域:南信州(長野県飯田市など)
選出回数:2年連続
発表日:2026年10月29日(木)
運営主体:株式会社南信州観光公社(地域DMO)
関連組織:南信州民俗芸能継承推進協議会

公式サイト
https://msnav.com/