CULTURE | 2026/09/22

「最初のイメージとは違う」 を体現する、余白でできた空間

thisisneverthat®日本3号店が片山正通の設計で9月19日渋谷に誕生

FINDERS編集部

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余白がブランドの哲学を空間に変える

渋谷にまた一つ、洋服を売るためだけではない店が生まれた。2026年9月19日、韓国・ソウル発のストリートブランド「thisisneverthat®」の日本国内3店舗目となるフラッグシップストア「thisisneverthat® Shibuya Flagship Store」がオープンする。インテリアデザインを手掛けたのは、UNIQLOのグローバル旗艦店やHUMAN MADEなど数々のブランド体験を空間化してきたWonderwall®の片山正通である。

「最初に思い描いたイメージと、最終的な仕上がりは違う」というブランド名の由来に、Wonderwall®はつくり手の意図だけでは決まらない可能性を読み取った。今回の空間のテーマに据えたのは「余白/emptiness」。光や映像、音、商品、そして訪れる人の活動が加わることで、空間そのものが更新され続けていくという試みである。

2010年にソウルで誕生した「thisisneverthat®」は、90年代のストリートカルチャーを現代の視点で再解釈し、ファッションを起点にコラボレーションを重ねてきたブランドだ。90年代のファッションシーンを実際に見てきた片山の記憶と、そのカルチャーを現在へ繋ぐブランドの視点が、今回の空間には重なっている。

鏡と光が奥行きを操作する1階、自然光に開かれる2階

大きな一枚のガラス自動扉を抜けると、幅約13.4m、高さ約3mのLEDビジョンに包まれたエントランスコリドーが現れる。通りの喧騒から一転、視界を満たす映像が没入感を高め、奥へと歩みを誘う構成だ。

コリドーの先、奥行き約25mの1階では、正面の鏡面壁にスリット状の商品棚を組み込み、反対側に並ぶ商品を映し込むことで実像と反射像を重ね、空間の奥行きを視覚的に増幅させている。床面、ステージ、カウンターは同じ大判の大理石スラブから切り出され、一つのオブジェクトとして空間に重心を与える。1階と2階をつなぐ階段はガラスで囲い、光天井からの光を内包する独立した余白として設計された。

2階は一転して自然光に開かれる。全面ガラスのファサードには、ブランド名そのものを巨大な光のテキストとしてオブジェクト化した。露出した梁や柱、ルーバー越しの設備が、建築本来の力をそのまま感じさせる佇まいをつくる。奥へ進むとDJブース、ポップアップエリア、フィッティングルームが順に展開し、ポップアップエリアはガラスの開閉でフロア全体と一体にも独立した空間にもなる。最奥のフィッティングルームには、建物の構造体とは別に現場で打設した荒々しいコンクリートが使われている。

彫刻的な家具と音響が空間に個性を与える

2階には、オランダ・アイントホーフェンを拠点とする日本出身のデザイナー/アーティスト、Sho Ota(太田翔)氏によるベンチやスツール、DJブースが配置されている。日本で培った木製家具の製作経験をもとに、木目や節、構造といった素材の個性を引き出しながら、機能と彫刻性を併せ持つオブジェクトを手がけてきた作家だ。無垢の木材の質感や量感が、空間に独特の個性を添えている。

音響計画には、FISHMANSや坂本龍一氏をはじめ国内外のアーティストのレコーディングやライブ、展示や公共空間の音響を手がけてきたサウンドディレクターのZAK氏を迎えた。ライブサウンドで評価の高いL-Acousticsと、スタジオモニターとして知られるADAM Audioのスピーカーを1・2階それぞれの空間特性に合わせて配置し、音楽イベントにも対応できる環境を整えている。

洋服という主役を引き立てながら、光・素材・音、そして訪れる人の動きそのものが空間の一部になっていく。この店舗を訪れることは、単なる買い物というより、ブランドの哲学を五感で確かめる体験に近い。渋谷でデザインや空間体験に関心がある人は、オープン後に足を運んでみたい場所である。


thisisneverthat® 
https://thisisneverthat.jp/